和歌ノート

八代集(古今・後撰・拾遺・後拾遺・金葉・詞花・千載・新古今)の注釈メモ

古今和歌集巻第七

賀歌 二十二首

賀歌

343

題しらず

読人しらず

我君は千世にやちよにさざれ石のいはほと成て苔のむすまで

  • 定家八代抄・賀歌:585
  • 限りもなく遠くといはふなり(十口抄)
  • 酉陽雑俎「石遂長不已。経年重四十斤」

344

わたつ海の浜の真砂をかぞへつゝ君がちとせのありかずにせん

  • 大きに限りなきことを言ひたてんためなり(十口抄)

345

しほの山さしでの磯にすむ千鳥君が御代をばやちよとぞなく

  • 定家八代抄・賀歌:591
  • 古今選・賀 ○
  • やちよ:千鳥の鳴き声⇔八千代

346

わが齢君がやちよにとりそへてとゞめをきては思ひでにせよ

  • 君臣合体の心なり(両度聞書)

347

仁和の御時、僧正遍昭に七十の賀給ける時の御歌

かくしつゝとにも角にもながらへて君がやちよに逢よしもがな

  • 定家八代抄・賀歌:592
  • 古今選・賀 ○
  • 永らふるばかりを詮にして、君が八千代に合はばやと言へり(両度聞書)

348

仁和のみかどのみこにおはしましける時に、御をばのやそぢの賀にしろがねをつゑにつくれりけるを見て、かの御をばにかはりてよめる

僧正遍昭

ちはやぶる神のきりけんつくからにちとせのさかもこえぬべら也

  • 定家八代抄・賀歌:593
  • ちはやぶる⇒神
  • 杖を褒めむとて神や切りけむと言ふ(栄雅抄)

349

ほりかはのおほいまうちぎみの四十賀、九条の家にてしける時によめる

在原業平朝臣

桜花ちりかひくもれおいらくのこんといふなるみちまがふがに

  • 老いの来る道:時間発展→空間並進
  • 賀宴の桜→時間的な概念の実体化

350

さだときのみこのをばのよそぢの賀を大井にてしける日よめる

きのこれをか

かめのおの山のいはねをとめておつる瀧の白玉千世のかずかも

  • 定家八代抄・賀歌:609
  • お:尾⇔峰
  • 白玉:滝の飛沫

351

さだやすのみこのきさいの宮の五十の賀たてまつりける御屏風に、さくらの花のちるしたに人の花見たるかたかけるをよめる

藤原のおきかぜ

徒にすぐる月日はおもほえで花みてくらす春ぞすくなき

  • 定家八代抄・春歌下:152
  • 古今選・雑 ○
  • 詞書にて賀の部に入れるなり(両度聞書)
  • 惜春

352

もとやすのみこの七十の賀のうしろの屏風によみてかきける

きのつらゆき

春くればやどにまづさく梅の花君が千とせのかざしとぞ見る

  • 梅は諸木の花の初めなり(両度聞書)

353

素性法師

いにしへにありきあらずはしらねどもちとせのためし君にはじめむ

  • 定家八代抄・賀歌:595
  • ためし:先例

354

ふして思ひおきてかぞふる万世は神ぞしるらん我君のため

  • 定家八代抄・賀歌:596
  • 古今選・賀 ○
  • かぞふる:念誦する

355

藤原三善が六十賀によみける

在原しげはる

つるかめもちとせの後はしらなくにあかぬ心にまかせはてゝん

この歌はある人在原のときはるがともいふ

  • 白氏文集「松柏与亀鶴。其寿皆千年」

356

よしみねのつねなりがよそぢのがに、むすめにかはりてよみ侍ける

そせい法し

万代をまつにぞ君をいはひつるちとせのかげにすまんと思へば

  • 定家八代抄・賀歌:597
  • まつ:待つ⇔松
  • いはひつる:(連体形)つる⇔鶴
  • 松と鶴〜長寿

357

内侍のかみの、右大将藤原朝臣の四十賀しける時に、四季のゑかけるうしろの屏風にかきたりけるうた

かすが野にわかなつみつゝ万代をいはふ心は神ぞしるらん

  • 定家八代抄・賀歌:613
  • 古今選・賀 ○
  • かすが野:春日神社(藤原氏の氏神)

358

山たかみ雲ゐにみゆる桜花心のゆきておらぬ日ぞなき

  • 定家八代抄・賀歌:620
  • 雲ゐ:雲のかかっている所

359

めづらしき声ならなくに時鳥こゝらのとしをあかずも有かな

  • ほととぎすの声→不変

360

住の江の松を秋風吹からにこゑうちそふるおきつ白浪

  • 定家八代抄・賀歌:622
  • 住の江⇒松
  • 松風の音⇔白波の音

361

千鳥なくさほの川霧たちぬらし山の木のはも色まさり行

  • 定家八代抄・秋歌下:443
  • 万葉集「千鳥鳴く佐保の川瀬のさざれ波やむ時もなしあが恋ふらくは」

362

秋くれど色もかはらぬときは山よそのもみぢを風ぞかしける

  • 定家八代抄・賀歌:621
  • ときは山:常盤山→常緑
  • 常緑⇔紅葉

363

白雪のふりしく時はみよしのゝ山した風に花ぞちりける

  • 定家八代抄・冬歌:567
  • 万葉集「み吉野の山下風の寒けくにはたやこよひもわがひとり寝む」
  • 雪〜花

364

春宮のむまれたまへりける時にまいりてよめる

典侍藤原よるかの朝臣

峰たかきかすがの山にいづるひはくもる時なくてらすべら也

  • 定家八代抄・賀歌:584
  • いづるひ:春宮→太陽
  • 春宮の母公、藤氏なれば、春日山を取り出づるなり(両度聞書)