和歌ノート

八代集(古今・後撰・拾遺・後拾遺・金葉・詞花・千載・新古今)の注釈メモ

古今和歌集巻第八

離別歌 四十一首

離別歌

365

題しらず

在原行平朝臣

立わかれいなばの山の峰におふる松としきかば今かへりこん

  • 定家八代抄・別離歌:729
  • 古今選・別 ○

366

よみ人しらず

すがるなく秋の萩原朝たちてたびゆく人をいつとかまたん

  • 定家八代抄・別離歌:730
  • 古今選・別 ○

367

かぎりなき雲ゐのよそにわかるとも人を心にをくらさんやは

  • 定家八代抄・別離歌:731

368

をのゝちふるがみちのくのすけにまかりける時にはゝのよめる

たらちねのおやのまもりとあひそふる心ばかりはせきなとゞめそ

  • 定家八代抄・別離歌:761

369

さだときのみこの家にて、ふぢはらのきよふがあふみのすけにまかりける時に、むまのはなむけしけるよゝめる

きのとしさだ

けふわかれあすはあふみと思へどもよやふけぬらん袖の露けさ

  • 定家八代抄・別離歌:747
  • 古今選・別 ○

370

こしへまかりける人によみてつかはしける

かへる山ありとはきけど春霞立わかれなば恋しかるべし

371

人のむまのはなむけにてよめる

きのつらゆき

おしむから恋しき物を白雲の立なん後はなに心ちせん

372

ともだちの人のくにへまかりけるによめる

在原しげはる

わかれてはほどをへだつと思へばやかつみながらにかねて恋しき

373

あづまのかたへまかりける人によみてつかはしける

いかごのあつゆき

思へども身をしわけねばめにみえぬ心を君にたぐへてぞやる

374

あふさかにて人をわかれける時によめる

なにはのよろづを

相坂の関しまさしき物ならばあかずわかるゝ君をとゞめよ

  • 定家八代抄・別離歌:748

375

題しらず

よみびとしらず

から衣たつ日はきかじ朝露のおきてしゆけばけぬべき物を

この歌はある人、つかさを給はりてあたらしきめにつきて、としへてすみける人をすてゝたゞあすなんたつとばかりいへりける時に、ともかうもいはでよみてつかはしける

  • 定家八代抄・別離歌:749

376

ひたちへまかりける時にふぢはらのきみとしによみてつかはしける

あさなけに見べき君としたのまねば思たちぬる草枕なり

  • 定家八代抄・別離歌:750

377

きのむねさだがあづまへまかりける時に、人の家にやどりてあかつきいでたつとてまかり申しければ、女のよみていだせりける

よみ人しらず

えぞしらぬ今心みよ命あらば我や忘るゝ人やとはぬと

  • 定家八代抄・別離歌:739

378

あひしりて侍ける人の、あづまのかたへまかりけるををくるとてよめる

ふかやぶ

雲ゐにもかよふ心のをくれねばわかると人にみゆばかり也

379

とものあづまへまかりける時によめる

よしみねのひでをか

白雲のこなたかなたに立別れ心をぬさとくだくたび哉

380

みちのくにへまかりける人によみてつかはしける

つらゆき

白雲のやへにかさなるをちにても思はん人に心へだつな

  • 定家八代抄・別離歌:740

381

人をわかれける時によみける

わかれてふことは色にもあらなくに心にしみてわびしかるらん

  • 古今選・別 ○

382

あひしれりける人のこしのくにゝまかりて、年へて京にまうできて又かへりける時によめる

凡河内みつね

かへる山なにぞはありてあるかひはきてもとまらぬなにこそ有けれ

383

こしのくにへまかりける人によみてつかはしける

よそにのみ恋やわたらん白山のゆきみるべくもあらぬわが身は

384

をとは山のほとりにて人をわかるとてよめる

つらゆき

をとは山こだかくなきて郭公君がわかれをおしむべら也

385

藤原ののちかげがからものゝつかひになが月のつごもりがたにまかりけるに、うへのをのこどもさけたうびけるついでによめる

ふぢはらのかねもち

もろともになきてとゞめよ蛬秋の別はおしくやはあらぬ

386

平もとのり

秋霧のともに立いでゝわかれなば晴ぬ思ひにこひやわたらむ

387

源のさねがつくしへゆあみんとてまかりける時に、山ざきにてわかれおしみける所にてよめる

しろめ

いのちだに心にかなふ物ならば何か別のかなしからまし

  • 定家八代抄・別離歌:741
  • 古今選・別 ○

388

やまざきより神なびのもりまでをくりにし人々まかりて、かへりがてにして別れおしみけるによめる

源さね

人やりの道ならなくに大かたはいきうしといひていざかへりなん

  • 定家八代抄・別離歌:742

389

今はこれよりかへりねとさねがいひけるおりによみける

藤原かねもち

したはれてきにし心の身にしあればかへるさまには道もしられず

390

藤原のこれをかゞむさしのすけにまかりける時に、をくりにあふさかをこゆとてよみける

つらゆき

かつこえて別れもゆくか相坂は人だのめなるなにこそ有けれ

  • 定家八代抄・別離歌:743

391

おほえのちふるがこしへまかりけるむまのはなむけによめる

藤原かねすけの朝臣

君がゆくこしの白山しらねどもゆきのまに〳〵跡は尋ん

392

人の花山にまうできて、夕さりつかたかへりなんとしける時によめる

僧正遍昭

夕暮のまがきは山とみえなゝんよるはこえじとやどりとるべく

  • 定家八代抄・別離歌:770

393

山にのぼりてかへりまうできて、人々わかれけるついでによめる

幽仙法師

わかれをば山の桜にまかせてんとめむとめじは花のまに〳〵

394

うりんゐんのみこの舎利会に山にのぼりて帰りけるに、桜の花のもとにてよめる

僧正へんぜう

山風に桜吹まきみだれなん花のまぎれに立とまるべく

395

幽仙法師

ことならば君とまるべくにほはなんかへすは花のうきにやはあらぬ

396

仁和のみかどみこにおはしましける時に、ふるのたき御らんじにおはしましてかへりたまひけるによめる

兼芸法師

あかずしてわかるゝ涙たきにそふ水まさるとやしもはみゆらん

397

かんなりのつぼにめしたりける日おほみきなどたうべて、あめのいたうふりければゆふさりまで侍て、まかりいで侍けるおりにさか月をとりて

つらゆき

秋はぎの花をば雨にぬらせども君をばましておしとこそ思へ

398

とよめりける返し

兼覧王

おしむらん人の心をしらぬまに秋のしぐれと身ぞふりにける

399

かねみのおほきみにはじめて物がたりしてわかれける時によめる

みつね

別るれど嬉しくもあるかこよひよりあひみぬさきに何を恋まし

400

題しらず

読人しらず

あかずしてわかるゝ袖の白玉は君がゝたみとつゝみてぞゆく

401

限なく思ふ涙にそほちぬる袖はかはかじあはん日までに

402

かきくらしことはふらなん春雨にぬれぎぬきせて君をとゞめん

403

しゐてゆく人をとゞめん桜花いづれを道とまどふまでちれ

404

しがの山ごえにて、いし井のもとにて物いひける人のわかれけるおりによめる

つらゆき

結ぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人にわかれぬる哉

  • 定家八代抄・別離歌:769

405

道にあへりける人のくるまに物をいひつきて別ける所にてよめる

とものり

したの帯のみちはかた〴〵わかるともゆきめぐりてもあはんとぞおもふ

  • 定家八代抄・別離歌:767