和歌ノート

八代集(古今・後撰・拾遺・後拾遺・金葉・詞花・千載・新古今)の注釈メモ

古今和歌集巻第十一

恋歌一 八十三首

恋歌一

469

よみ人しらず

郭公鳴やさ月のあやめ草あやめもしらぬ恋もする哉

  • 定家八代抄・恋歌二:991
  • 古今選・戀 ○○

470

素性法師

音にのみきくの白露よるはおきてひるは思ひにあへずけぬべし

  • 定家八代抄・恋歌二:984

471

紀貫之

よしの川いはなみたかく行水のはやくぞ人を思ひそめてし

  • 定家八代抄・恋歌一:837
  • 古今選・戀 ○○

472

藤原勝臣

白波の跡なきかたに行舟も風ぞたよりのしるべ成ける

  • 定家八代抄・恋歌一:838

473

在原元方

音羽山をとにきゝつゝ相坂の関のこなたに年をふる哉

  • 定家八代抄・恋歌二:987
  • 古今選・戀 ○○

474

立帰りあはれとぞ思ふよそにても人に心をおきつ白波

  • 定家八代抄・恋歌二:973
  • 古今選・戀 ○

475

つらゆき

世中はかくこそ有けれ吹風のめに見ぬ人も恋しかりけり

  • 定家八代抄・恋歌一:841

476

在原なりひらの朝臣

みずもあらず見もせぬ人の恋しくはあやなくけふの詠めくらさん

  • 定家八代抄・恋歌一:843
  • 古今選・戀

477

よみ人しらず

しるしらぬ何かあやなく分ていはん思ひのみこそしるべ成けれ

  • 定家八代抄・恋歌一:844

478

みぶのたゞみね

春日野の雪まを分ておひいでくる草のはつかに見えし君はも

  • 定家八代抄・恋歌一:850
  • 古今選・戀 ○

479

つらゆき

山桜霞のまよりほのかにも見てし人こそ恋しかりけれ

  • 古今選・戀 ○

480

もとかた

たよりにもあらぬ思ひのあやしきは心を人につくる成けり

  • 定家八代抄・恋歌一:842

481

凡河内みつね

初雁のはつかに声をきゝしより中天にのみ物を思ふかな

482

つらゆき

逢事は雲ゐはるかになる神の音にきゝつゝ恋わたるかな

483

よみ人しらず

かたいとをこなたかなたによりかけてあはずは何を玉のをにせん

  • 定家八代抄・恋歌二:1021
  • 古今選・戀 ○

484

夕暮は雲のはたてに物ぞ思あまつ空なる人をこふとて

  • 定家八代抄・恋歌一:890
  • 古今選・戀 ○○

485

かりこもの思乱れて我こふといもしるらめや人しつげずは

  • 定家八代抄・恋歌一:891

486

つれもなき人をやねたく白露のおくとはなげきぬとは忍ばん

  • 定家八代抄・恋歌一:892

487

千早振かもの社のゆふだすきひとひも君をかけぬ日はなし

  • 定家八代抄・恋歌一:893

488

我恋はむなしき空にみちぬらし思ひやれども行方もなし

  • 定家八代抄・恋歌一:894

489

するがなるたごの浦浪たゝぬ日はあれども君をこひぬ日はなし

  • 定家八代抄・恋歌一:895

490

夕づくよさすや岡べの松の葉のいつとも分ぬ恋もするかな

  • 定家八代抄・恋歌一:889

491

足引の山した水のこがくれてたぎつ心をせきぞかねつる

492

吉野川いはきりとをし行水の音にはたてじ恋はしぬとも

493

瀧つせの中にもよどはありてふをなど我恋のふちせともなき

494

山たかみした行水のしたにのみ流てこひん恋はしぬとも

495

思出るときはの山の岩つゝじいはねばこそあれ恋しき物を

  • 定家八代抄・恋歌五:1302

496

人しれず思へばくるし紅の末つむ花の色にいでなん

  • 定家八代抄・恋歌二:1001

497

秋のゝのお花にまじり咲花の色にやこひんあふよしをなみ

  • 定家八代抄・恋歌二:1002

498

わがそのゝ梅のほつえに鶯のねに鳴ぬべき恋もする哉

  • 定家八代抄・恋歌二:988

499

足曳の山郭公わがごとや君にこひつゝいねがてにする

  • 定家八代抄・恋歌二:992

500

夏なれば宿にふすぶるかやり火のいつ迄わがみ下もえにせん

  • 定家八代抄・恋歌二:993

501

恋せじと御手洗川にせし御禊神はうけずぞ成にけらしも

  • 定家八代抄・恋歌四:1242

502

哀てふことだになくは何をかは恋のみだれのつかねをにせん

503

おもふには忍ぶる事ぞまけにける色には出じと思ひし物を

  • 定家八代抄・恋歌二:1024

504

我恋は人しるらめやしきたへの枕のみこそしらばしるらめ

  • 定家八代抄・恋歌二:1026

505

あさぢふのをのゝ篠原忍ぶとも人しるらめやいふ人なしに

506

人しれぬ思ひやなぞとあしがきのまぢかけれども逢よしのなき

  • 定家八代抄・恋歌二:1027

507

思ふ共こふともあはん物なれやゆふてもたゆくとくる下ひも

  • 定家八代抄・恋歌二:1032

508

いで我を人なとがめそおほ舟のゆたのたゆたに物思ふ比ぞ

  • 定家八代抄・恋歌一:896

509

伊勢の海に釣する蜑のうけなれや心ひとつを定めかねつる

  • 定家八代抄・恋歌一:897

510

いせの海のあまのつりなは打はへてくるしとのみや思わたらん

  • 定家八代抄・恋歌一:898

511

涙川なに水上を尋ねけん物思時のわが身なりけり

  • 定家八代抄・恋歌二:941

512

たねしあれば岩にも松はおひにけり恋をしこひばあはざらめやは

  • 定家八代抄・恋歌一:888

513

朝な〳〵たつ川霧の空にのみうきて思ひのあるよ成けり

  • 定家八代抄・恋歌二:947
  • 古今選・戀 ○

514

わすらるゝ時しなければあしたづの思乱てねをのみぞなく

  • 定家八代抄・恋歌三:1145

515

唐衣日も夕暮になる時はかへす〴〵ぞ人はこひしき

  • 定家八代抄・恋歌三:1083

516

よひ〳〵に枕さだめんかたもなしいかにねしよか夢にみえけん

  • 定家八代抄・恋歌三:1084

517

恋しきに命をかふる物ならばしにはやすくぞあるべかりける

518

人の身もならはし物をあはずしていざ心みん恋やしぬると

519

忍ぶればくるしき物を人しれず思ふてふこと誰にかたらん

520

こむよにもはや成なゝんめの前につれなき人を昔と思はん

  • 定家八代抄・恋歌二:1031

521

つれもなき人をこふとて山びこの答へするまで歎つる哉

522

行水にかずかくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり

  • 定家八代抄・恋歌二:962
  • 古今選・戀 ○

523

人を思ふ心は我にあらねばや身のまどふだにしられざるらん

  • 定家八代抄・恋歌四:1181

524

思ひやるさかひはるかに成やするまどふ夢ぢに逢人のなき

525

夢の中にあひみん事をたのみつゝくらせる宵はねんかたもなし

  • 定家八代抄・恋歌四:1223

526

恋しねとするわざならしむば玉のよるはすがらに夢にみえつゝ

  • 定家八代抄・恋歌四:1224

527

涙川枕ながるゝうきねには夢もさだかにみえずぞ有ける

  • 定家八代抄・恋歌四:1225

528

恋すれば我身はかげと成にけりさりとて人にそはぬ物ゆへ

529

かゞり火にあらぬ我身のなぞもかく涙の川にうきてもゆらん

530

かゞりびの影となるみのわびしきは流て下にもゆる成けり

531

早きせにみるめおひせば我袖の涙のかはにうへまし物を

532

おきへにもよらぬ玉もの浪のうへに乱てのみや恋わたりなん

533

あしがものさはぐ入江の白浪のしらずや人をかくこひんとは

  • 定家八代抄・恋歌四:1184

534

人しれぬ思ひを常にするがなるふじの山こそわがみ成けれ

535

とぶとりの声もきこえぬおく山のふかき心を人はしらなん

536

逢坂のゆふつけ鳥も我ごとく人や恋しきねのみ鳴らん

537

あふさかの関にながるゝいはし水いはで心におもひこそすれ

  • 定家八代抄・恋歌二:940

538

うき草のうへは茂れるふちなれや深き心をしる人のなき

  • 定家八代抄・恋歌一:857

539

打侘てよばゝん声に山びこのこたへぬ山はあらじとぞ思ふ

540

心がへする物にもがかたこひは苦しき物と人にしらせん

541

よそにしてこふればくるしいれひものおなじ心にいざむすびてん

542

春たてば消る氷の残りなく君が心は我にとけなん

543

あけたてばせみのおりはへなきくらしよるは螢のもえこそわたれ

544

夏虫のみを徒になす事もひとつ思ひによりて成けり

  • 定家八代抄・恋歌四:1261

545

夕さればいとゞひがたき我袖に秋の露さへをきそはりつゝ

546

いつとても恋しからずはあらねども秋の夕はあやしかりけり

  • 定家八代抄・恋歌四:1263

547

秋の田のほにこそ人を恋ざらめなどか心に忘しもせん

548

秋の田のほのうへをてらす稲妻の光のまにも我や忘るゝ

  • 定家八代抄・恋歌四:1264

549

人めもる我かはあやな花薄などかほに出て恋ずしもあらん

550

あは雪のたまればかてにくだけつゝ我物思ひのしげき比哉

  • 定家八代抄・恋歌四:1300

551

おく山のすがのねしのぎふる雪のけぬとかいはん恋のしげきに

  • 定家八代抄・恋歌四:1301