和歌ノート

八代集(古今・後撰・拾遺・後拾遺・金葉・詞花・千載・新古今)の注釈メモ

古今和歌集巻第十二

恋歌二 六十四首

恋歌二

552

題しらず

小野小町

思つゝぬればや人の見えつらん夢としりせば覚ざらましを

  • 定家八代抄・恋歌四:1214
  • 古今選・戀 ○○

553

うたゝねに恋しき人を見てしより夢てふ物はたのみ初てき

  • 定家八代抄・恋歌四:1215
  • 古今選・戀 ○○

554

いとせめて恋しき時はむば玉のよるの衣を返してぞきる

  • 定家八代抄・恋歌四:1216

555

素性法師

秋風の身にさむければつれもなき人をぞ頼むくるゝ夜ごとに

  • 定家八代抄・恋歌四:1269
  • 古今選・戀 ○

556

しもついづもでらに人のわざしける日、真せい法しのだうしにていへりけることばを歌によみて、をのゝこまちがもとにつかはしける

あべのきよゆきの朝臣

つゝめども袖にたまらぬ白玉は人をみぬめの涙なりけり

  • 定家八代抄・恋歌五:1327
  • 古今選・戀 ○

557

返し

こまち

をろかなる涙ぞ袖に玉はなす我はせきあへずたきつせなれば

  • 定家八代抄・恋歌五:1328

558

寛平御時きさいの宮の歌合のうた

藤原としゆきの朝臣

恋わびて打ぬるなかに行かよふ夢のたゞぢはうつゝならなん

  • 定家八代抄・恋歌四:1217

559

住の江の岸による浪よるさへや夢の通ひぢ人めよくらん

  • 定家八代抄・恋歌四:1218
  • 古今選・戀 ○

560

をのゝよしき

わが恋はみ山がくれの草なれやしげさまされどしる人のなき

  • 定家八代抄・恋歌一:858

561

紀とものり

よひのまもはかなくみゆる夏虫にまどひまされる恋もする哉

562

夕されば螢よりけにもゆれども光みねばや人のつれなき

  • 定家八代抄・恋歌二:996

563

さゝのはに置霜よりも独ぬるわが衣でぞさえまさりける

  • 定家八代抄・恋歌三:1139

564

我宿の菊のかきねにをく霜の消帰りてぞ恋しかりける

  • 定家八代抄・恋歌二:1007

565

川の瀬になびく玉ものみがくれて人にしられぬ恋もする哉

  • 定家八代抄・恋歌一:861

566

みぶのたゞみね

かきくらし降白雪の下ぎえに消て物思比にもあるかな

  • 定家八代抄・恋歌二:1008

567

藤原おきかぜ

君こふる涙のとこにみちぬればみをつくしとぞ我は成ける

  • 定家八代抄・恋歌三:1123

568

しぬる命いきもやすると心みに玉のをばかりあはんといはなん

  • 定家八代抄・恋歌二:1022

569

侘ぬればしゐて忘んと思へども夢といふ物ぞ人だのめなる

  • 定家八代抄・恋歌四:1213

570

よみ人しらず

わりなくもねても覚ても恋しきか心をいづちやらば忘れん

  • 定家八代抄・恋歌四:1235

571

恋しきに侘てたましゐまどひなばむなしきからのなにや残らん

  • 定家八代抄・恋歌四:1236

572

紀貫之

君こふる涙しなくは唐衣むねのあたりは色もえなまし

  • 定家八代抄・恋歌五:1329

573

題しらず

よと友にながれてぞ行涙川冬もこほらぬみなは成けり

574

夢路にも霧や置らんよもすがらかよへる袖のひちてかはかぬ

575

素性法師

はかなくて夢にも人をみつるよはあしたの床ぞおきうかりける

  • 定家八代抄・恋歌四:1228

576

藤原たゞふさ

偽の涙なりせば唐衣しのびに袖はしぼらざらまし

577

大江千里

ねになきてひちにしかども春雨にぬれにし袖とゝはゞこたへん

578

としゆきの朝臣

我ごとく物やかなしき郭公時ぞともなくよたゞ鳴らん

579

つらゆき

さ月やま梢をたかみ郭公なくね空なる恋もする哉

  • 古今選・戀 ○

580

凡河内みつね

秋霧のはるゝ時なき心にはたちゐの空もおもほえなくに

581

清原ふかやぶ

虫のごとこゑにたてゝはなかね共涙のみこそしたにながるれ

582

これさだのみこの家の歌合のうた

読人しらず

秋なれば山とよむまでなくしかに我おとらめや独ぬるよは

583

題しらず

貫之

秋のゝにみだれて咲る花の色のちくさに物を思ふ比かな

  • 古今選・戀 ○

584

みつね

独して物を思へば秋の田のいなばのそよといふ人のなき

585

ふかやぶ

人を思心はかりにあらねども雲ゐにのみも鳴わたる哉

586

たゞみね

秋風にかきなすことのこゑにさへはかなく人の恋しかるらん

587

つらゆき

まこもかる淀のさは水雨ふれば常よりことにまさる我こひ

588

やまとに侍りける人につかはしける

こえぬまは芳野の山の桜花人づてにのみ聞わたるかな

589

やよひばかりにものゝたうびける人のもとに、又人まかりてせうそこすときゝて読てつかはしける

露ならぬ心を花にをきそめて風吹ごとに物思ひぞつく

590

題しらず

坂上これのり

我恋にくらぶの山の桜花まなくちるともかずはまさらじ

591

むねをかのおほより

冬川のうへはこほれる我なれやしたにこがれて恋渡るらん

592

たゞみね

たきつせにねざしとゞめぬ浮草のうきたる恋も我はする哉

593

とものり

宵々にぬぎて我ぬるかり衣かけて思はぬ時のまもなし

  • 定家八代抄・恋歌四:1168

594

東路のさやの中山中々に何しか人を思ひそめけん

  • 定家八代抄・恋歌一:919
  • 古今選・戀 ○○

595

しきたへの枕の下に海はあれど人をみるめはおひずぞ有ける

596

年をへてきえぬ思ひは有ながらよるの袂は猶こほりけり

597

つらゆき

我恋はしらぬ山路にあらなくにまどふ心ぞわびしかりける

598

紅のふりいでつゝなく涙には袂のみこそ色まさりけれ

599

白玉とみえし涙も年ふればから紅にうつろひにけり

  • 定家八代抄・恋歌五:1330

600

みつね

夏虫をなにかいひけん心から我も思ひにもえぬべらなり

601

たゞみね

風ふけば峰にわかるゝ白雲のたえてつれなき君が心か

  • 定家八代抄・恋歌五:1353
  • 古今選・戀 ○

602

月影にわが身をかふる物ならばつれなき人も哀とやみん

603

ふかやぶ

恋しなばたがなはたゝじ世中の常なき物といひはなすとも

604

貫之

津の国の難波のあしのめもはるにしげきわが恋人しるらめや

  • 定家八代抄・恋歌一:906

605

てもふれで月日へにけるしらま弓おきふしよるはいこそねられね

  • 定家八代抄・恋歌三:1097

606

人しれぬ思ひのみこそ侘しけれ我歎をば我のみぞしる

607

とものり

ことに出ていはぬばかりぞみなせ川下にかよひて恋しきものを

608

みつね

君をのみ思ひねにねし夢なればわが心からみつる成けり

609

たゞみね

命にもまさりて惜くある物は見はてぬ夢の覚るなりけり

  • 定家八代抄・恋歌四:1231

610

はるみちのつらき

梓弓ひけばもとすゑ我かたによるこそまされ恋のこゝろは

  • 定家八代抄・恋歌三:1096

611

みつね

わが恋は行ゑもしらずはてもなしあふを限と思ふばかりぞ

  • 定家八代抄・恋歌二:1015

612

我のみぞ悲しかりけるひこぼしもあはですぐせる年しなければ

613

ふかやぶ

今ははや恋しなましをあひみんとたのめし事ぞ命成ける

614

みつね

たのめつゝあはで年ふるいつはりにこりぬ心を人はしらなん

  • 定家八代抄・恋歌二:1017

615

とものり

いのちやはなにぞは露のあだ物をあふにしかへば惜からなくに

  • 定家八代抄・恋歌二:1023