和歌ノート

八代集(古今・後撰・拾遺・後拾遺・金葉・詞花・千載・新古今)の注釈メモ

後撰和歌集巻第二

春歌中 三十四首

春歌中

47

としおひてのちむめのはなうへて、あくるとしの春おもふ所ありて

藤原扶幹朝臣

うへし時花みんとしも思はぬに咲ちるみればよはひ老にけり

  • 定家八代抄・春歌上:41

48

ねやのまへに竹のある所にやどり侍て

藤原伊衡朝臣

竹近く夜床ねはせじ鶯のなくこゑきけば朝いせられず

49

やまとのふるの山をまかるとて

僧正遍昭

いその神ふるの山べの桜花うへけむ時をしる人ぞなき

  • 定家八代抄・春歌上:92
  • 古今選・春 ○

50

花山にて道俗さけたうべけるおりに

素性法師

山守はいはゞいはなむ高砂のおのへの桜おりてかざゝん

  • 定家八代抄・春歌上:93

51

おもしろきさくらをおりてともだちのつかはしたりければ

よみ人しらず

桜花いろはひとしき枝なれどかたみにみればなぐさまなくに

52

返し

いせ

見ぬ人のかた見がてらはおらざりき身になぞらへる花にしあらねば

53

さくらの花をよめる

よみ人しらず

ふく風をならしの山の桜花のどけくぞみるちらじとおもへば

54

前栽に竹の中にさくらのさきたるをみて

坂上是則

桜花けふよくみてんくれ竹の一よのほどにちりもこそすれ

55

だいしらず

よみ人しらず

さくら花匂ふともなく春くればなどかなげきのしげりのみする

56

貞観御時ゆみのわざつかうまつりけるに

河原左大臣

けふさくらしづくに我身いざぬれんかごめにさそふ風のこぬまに

57

家よりとをき所にまかる時、前栽のさくらの花にゆひつけ侍ける

菅原右大臣

桜花ぬしを忘ぬ物ならばふきこん風にことづてはせよ

58

春のこゝろを

いせ

あをやぎのいとよりはへてをるはたをいづれの山の鶯かきる

59

はなのちるをみて

凡河内躬恒

あひ思はでうつろふいろをみる物を花にしられぬながめする哉

  • 九代抄・春:3

60

帰鴈をきゝて

よみ人しらず

かへるがり雲ぢにまどふ声す也霞ふきとけこのめ春風

  • 古今選・春 ○

61

朱雀院のさくらのおもしろき事と延光朝臣のかたり侍ければ、みるやうもあらまし物をなど昔を思ひ出て

大将御息所

さきさかず我になつげそ桜花人づてにやはきかむと思ひし

  • 定家八代抄・春歌下:150

62

だいしらず

よみ人しらず

春くれば木がくれおほき夕づくよおぼつかなくも花かげにして

63

立わたる霞のみかは山たかみみゆる桜のいろもひとつを

64

大空におほふばかりの袖もがな春さく花を風にまかせじ

  • 定家八代抄・春歌下:155

65

やよひのついたちころに女につかはしける

なげきさへ春をしるこそわびしけれもゆとは人にみえぬ物から

66

春雨のふらばおもひのきえもせでいとゞなげきのめをもやすらん、といふふる歌の心ばへを女にいひつかはしたりければ

もえわたるなげきは春のさがなれば大かたにこそ哀ともみれ

67

女のもとにつかはしける

藤原師尹朝臣

青柳のいとつれなくも成ゆくかいかなるすぢに思ひよらまし

68

衛門のみやす所の家うづまさに侍けるに、そこの花おもしろかなりとておりにつかはしたりければ、きこえたりける

山里にちりなましかばさくら花にほふさかりもしられざらまし

69

御返し

にほひこき花のかもてぞしられけるうへてみるらん人の心は

70

小弐につかはしける

藤原朝忠朝臣

ときしもあれ花のさかりにつらければ思はぬ山に入やしなまし

71

返し

我ために思はぬ山の音にのみ花さかりゆく春をうらみん

72

だいしらず

宮道高風

春のいけの玉もにあそぶにほ鳥のあしのいとなき恋もする哉

  • 定家八代抄・恋歌二:989
  • 古今選・戀 ○
  • 九代抄・春:4

73

寛平御時、花のいろ霞にこめてみせずといふ心をよみてたてまつれとおほせられければ

藤原興風

山風の花のかかどふふもとには春のかすみぞほだしなりける

74

だいしらず

よみ人しらず

春雨のよにふりにたる心にも猶あたらしく花をこそおもへ

75

京極のみやす所にをくり侍ける

春霞立て雲ゐになりゆくはかりのこゝろのかはるなるべし

76

だいしらず

ねられぬをしゐて我ぬる春の夜の夢をうつゝになすよしもがな

77

忍びたりけるおとこのもとに、春行幸あるべしときゝて、さうぞく一くだりてうじてつかはすとて、さくらいろのしたがさねにそへて侍ける

わが宿のさくらの色はうすくとも花のさかりはきてもおらなん

78

忘れ侍にける人の家に花をこふとて

兼覧王

としをへて花のたよりにこととはゞいとゞあだなる名をや立なん

79

よぶこどりをきゝてとなりの家にをくり侍ける

春道つらき

我宿の花になゝきそよぶこどりよぶかひありて君もこなくに

80

壬生忠岑が左近のつがひのおさにて、ふみをこせて侍けるつゐでに、身をうらみて侍りける返事に

きのつらゆき

ふりぬとていたくな侘そ春雨のたゞにやむべき物ならなくに